ICON 柔道の「落し技」のように

「マディソン群の橋」 / ロバート・J・ウォラー(文藝春秋)


 恋愛について考えてみるのだこの『マディソン郡の橋』を読めば日常生活を途中下車して過去に思いをはせたり愛の実体は何なんだろうと恋患い状態に浸りたくなる大阪の深夜番組で傑作なのがある「失恋レストラン」というのだが一度ゲストでおじゃました若手山田雅人君が今は亡き西条凡児さんばりの司会で失恋ホヤホヤの女性から話を聞きだしゲストが悩みに答えていくまあここまではよくある大阪流のお喋り好きの素人参加番組だがくだらないのがトークしている背後に水着の女性が10人程<鎮座ましまして、右手にハンカチを持ちいつも泣いているのだ大きく泣いて欲しい時はADが彼女等にキューを出す人をおちょくった企画である笑うことより泣くことがこんなに面白いとは思わなかった底辺には他人の色恋沙汰はどうぞ御勝手にして下さいという思いと失恋の痛手の深さは当人にしかわからないというコンセプトがある意図的に泣くという事で生まれる客観性好きだなあそれによって当人が道化の様になってしまい孤立して愛の深さが浮きぼりされていくのが実になんとも不思議であった
 この本も結局は他人の恋であるが思いの深さがわかり瞬間に恋に落ちて行く様や心の動きがスリリングに書かれていくなにげなく「恋に落ちる」と書いてしまったがなぜ「落ちる」と表現するのだろうか「恋に登る」ではどうもまぬけな事は分かるのだがこれは地獄の底まで道連れよ的な表現であろうがここに登場する中年男女は柔道の「落とし技」のように2人同時にカクンと落ちてしまう気持ちいいだろうな。
 女性の方は不倫なのだが不倫という言葉を陳腐にさせる愛の賛歌があり説得力があるしかも4日間の恋理想的ではないかそして2人は別れた後おのおのにその恋を熟成させ最後に大きなオチがあるこれは映画化されるらしいがスピルバーグがこのオチをどう表現するか楽しみである
 思い出の夢を現実の物として生きる女性はいい思い出の彼は年をとらないだがその連れ合いの旦那さんはたまったもんじゃない愛とは身勝手なものであるだから愛なのかもしれないともかくこの本を読む時冷静になってはいけない恋をしている時のように幻想を膨らませるだけ膨らませ非日常の時間に酔えばいい
 そういえば最近の私はめくるめく出会いをしてないな愛を捨てて生きるなんてバカみたいその気にさせる本であるよなもう一度妻に恋してみるかな夫婦が駆け落ちして誰か咎めてくれる人がいるだろうか咎めてくれないと燃えないもんだよなウ〜ム

( 協力 / 桃園書房・小説CULB '93年8月号掲載)

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