ICON やっぱり曖昧な旅館で

「 ザ・ホテル 」 / ジェフリー・ロビンソン (三田出版会刊)


 なんとも退屈な本であるイギリスの超高級ホテルマンがお客から沢山のお金をもらっていかにサービスをつくすのかとめんめんと書かれてゆくしかしその本を読んでる時の退屈さは大金持ち特有退屈さに似ているお金で何でもなると思うお客たちその退屈さが妙にリッチな気分にさせてくれる毎晩どこで読み終えてもいつ寝てもいいやホテルにいるような気分にさせてくれて退屈な本だなと思いながらぐっすり寝させてもらった読み終えた時にああこの退屈さともお別れかと変な名残惜しさを持ってしまう貴重な本である
 それにしてもホテルと旅館の違いはホントに文化の違いを感じますホテルは要求に答えることに万全をつくし要求しなければ何もしません旅館はまず部屋に入るとお世話係りがお茶を入れてくれて世間話ですからサービスは向こうの方からやってきますですが夜タバコを切らした場合などは断然ホテルですね電話一本すぐ持ってきてくれますほんと要求には対応しますね
 先日スペインにホテルに泊まった時もクーラーが送風になっていて良く効かなくて部屋を変えてくれと要求速に対応して部屋を変えてくれました要求に慣れてるんですねフロントで葉書は出せるしレストランの予約もしてくれますホテルは要求を楽しむ所かもしれません旅館はもてなしを待つ楽しみですかね権利を主張することになれてない奥ゆかしい日本人はこの本に出てくる大金持ちやVIPとよばれるお客の要求に驚いてしまいますよ部屋に大型テレビを置いておいてくれ、動物のらくだをあずけられる所をさがしてくれフランスに腕時計を忘れたからとってきてくれアメリカのその日の朝刊が読みたいそこはイギリスですよそのために新聞をコンコルドに乗せるというんですから要求する方も気持いいでしょうね超高級ホテルとなるとそれに答えるしっかりしたコンシェルジュという要求受付係がいるんですよこれはもう要求を楽しんでるとしか思えませんお金でサービスを買うんですね世界には桁違いの金持ちがいて余った金を使えるようになってるんです私としてはフランスに腕時計をとりに行く立場でいいですねそして体調をこわしたといってフランスで23日遊んできますよ
 お客に不手際がなかったか連日ミーティングを開くホテルマンの総支配人は言います「部屋に金を払う客には完璧な状態の部屋を使う権利がありホテルはそれを確実に保証する義務を負っているのだ」権利と義務ですよイギリスですね召使いのいる国ですよ権利と我が儘の違いが分からない私にはやっぱり曖昧な旅館で布団を敷いてもらう方がいいかな

( 協力 / 桃園書房・小説CULB '98年10月号掲載)


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